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商標・意匠部門

商標権侵害?これからは、出願以上の行為が必要です!

Written by Marie Pusel

翻訳 : 髙橋洋江

破棄院商事部が、ある共通の問題を提起した二つの事件の付託を受けた : 商標を使用していないにも関わらず、商標出願を行っただけで侵害行為になるのか?

 2021年10月13日の二つの判決で、破棄院は、長年の論争に終止符を打ち、判例法を覆した。これによって、境界線が明確になった : 出願は、侵害に当たらない。

  これらの事件では、いずれも、相手方による商標の使用を伴わない出願に対する侵害の請求を棄却された原告が、破棄院に上訴し、破棄院は、この問題に関する判例法を統一する機会を得た。

 これまで、二つの相反する見解があった : 

•    「単なる出願は、侵害を構成しない」という考えを支持する見解

 下級審の多くの判決は、商標の単なる出願や登録は、商取引における使用を構成せず、それゆえに、侵害として処罰され得ないとしていた。この考えを支持する理由として、公衆が係争に係る標章に触れる機会がないことから、先行商標の出所を表示する機能が損なわれることはなく、反対する登録所有者に不利益があるとは認められないことが強調された。さらに、欧州の判例法は、2016年3月3日のCJEUのDaimler判決で示されたように、この考えに沿ったものであった。

•    「出願は、既に行き過ぎである」という考えを支持する見解

 逆の立場を支持し、市場での実際の使用とは無関係に、商標を出願するだけで、既存の商標の許諾のない使用行為、つまり侵害行為を構成するおそれがある、と説く。

 破棄院は、この二つ目の見解を踏襲していた。とりわけ2016年には、「Appleが商標『iMessage』の商標登録出願を行ったことだけをもってしては、商標『I-Message』の侵害行為を構成し得ない」と判示した控訴院を批判した(破棄院商事部、2016年5月24日)。

 言い換えれば、フランスでは、下級審の裁判官がどちらかというと一つ目の見解を支持し、最高裁判所が介入する機会があれば、二つ目の見解を振りかざす傾向があった。

 そのため、法的に、やや混乱した状況であった。

 そこで、破棄院商事部は2021年10月13日に下された二つの判決において、一種の逆宙返りのような見事な急変で、この議論に終止符を打ったのである。

 破棄院は、以下のように判示した。

「商標としての標章の登録出願は、たとえそれが認められたとしても、その標章の下での商品又は役務の販売の開始がない場合には、CJEUの判例法の意味において、商品又は役務のための使用を特徴づけるものではない。同様に、そのような場合、公衆の意識の中で混同のおそれは全くなく、その結果、商標の出所表示の本質的な機能が損なわれることはない。

 したがって、標章の商標登録出願は、侵害行為を構成しない。」

 よって、破棄院は、侵害は、係争に係る標章を先行商標と同一又は類似の商品・役務について、取引の過程で使用することによってのみ構成され、当該商標に係る商品又は役務の商業上の出所を保証する機能の侵害が明らかになるか、あるいはそのおそれがある、とした欧州の判例法に依拠した。

 これらの判決には、これまでの混乱を明確にするメリットがある。これにより、一定のケースについては状況が簡素になり、権利の防衛のためのコストを抑えることができる : 係争に係る商標の使用が全くない場合には、フランス産業財産庁(INPI)における異議申立や無効審判を優先させるべきである

 この明確化が、簡素化とコスト低減につながるとすれば、朗報と言えるだろう。

 Plasseraud IPのチームは、このような手続きについて、皆様をご支援します。

 

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